「安定したいから成長したい」東大生がこぞってコンサル目指す、矛盾した心理をレジー氏が解説
日本の社会における働き方とキャリアの問題を解く 気鋭の著者・レジー氏インタビュー
■「成長」というワードに脅迫され続ける現代人
冒頭の、「安定したいから成長したい」というマインドについてあらためて聞いてみた。なぜ現代人はこんなことが頭にあるのか。
「終身雇用制度がいよいよ終わろうとしていることが大きいでしょうね。1つの会社にいれば安心という時代が終わって、『自分で稼げる力を身につけなければ』という意識が強くなった。皮肉なことに、安定を得るためには『成長しなければ』というプレッシャーを乗り越えないといけないんです」
安定したい気持ちがあるのに、行動は挑戦的なことをやらないといけない。昨今、起業や転職がある種のブームとなっているが、そういった行動もこの文脈で捉えられるかもしれない。
「現状維持は後退である」とあらゆる場所から言われる時代だ。
「このあたりの文脈は、『ファスト教養』で指摘した話と根っこは一緒なんです。教養が脅しのツールとして使われている。これを知らないとお前はビジネスパーソンとして終わってる、という具合に。こういうことを知ってたら楽しいよね、ではないんですよね」
この文化を作った要因の1つとして、レジー氏は『ファスト教養』で2010年代のNewsPicksの存在を挙げており、今回の取材でも同メディアやNewsPicksの書籍について言及した。
「弱肉強食と言って差し支えない価値観が流布されていたことに加えて、メディアとして圧倒的にスタイリッシュで読み応えのあるコンテンツが多かった。それゆえ、『成長こそ正義、それを目指さないのは負け』といったメッセージが必要以上に広がってしまったのかなと」
レジー氏はNewsPicksそのものを全否定しているわけではなく、ビジネスパーソンが上昇志向を持つこと自体は当然というスタンスを一貫してとっている。一方で、その発想がどこか行き過ぎたものになっていたのではないか、と警鐘を鳴らしている。
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東大生の就職人気ランキング上位をいつのまにか独占するようになった「コンサル」。この状況の背景にある時代の流れとは? 「転職でキャリアアップ」「ポータブルスキルを身につけろ」そんな勇ましい言葉の裏側に見えてきたのは、「仕事で成長」を課せられて不安を募らせるビジネスパーソンたちの姿だった。時代の空気を鋭く切り取った『ファスト教養 10分で答えが欲しい人たち』の著者が、我々が本当に向き合うべき成長とは何なのかを鮮やかに描き出す。圧倒的な努力や成長への強迫観念に追い立てられている人たちのための一冊。
〈Amazon内容紹介より〉